こんにちは、ひらりんです。
7月20日新木宏典さんが出演されている舞台「THE HISTORY BOYS(ヒスボ)」を池袋に観にいきました。
娘が舞台初日のこの日しか時間が取れないというので、抽選で2回トライしましたがチケットゲットできませんでした。
配信で観ればいいかと思っていたのですが、配信もないようで。
そんな中、追加のチケット販売があるというので3度目の正直で申し込んだら、席が離ればなれでしたがなんとか取ることができました。
若手の人気俳優さんたちがたくさん出演なさるのでチケット争奪戦、激しかったんでしょうね。
というわけで、イギリス赴任歴4年の夫とそれなりにイギリスを経験している娘と私の3人で観劇してまいりました。
娘を連れての家族で赴任の話はブログ記事「夏のイギリス・子育て体験記①
https://hirarin.blog/england-kosodate1-1/」などにまとめていますので、そちらを読んでくださるとうれしいです。
予習しないで行ったので想像してたのとずいぶん違った
ヒストリーボーイズはイギリスの劇作家アラン・ベネットによる戯曲で、英米で高く評価され、映画化もされた作品です。
オックスフォードやケンブリッジ大学を目指す個性豊かな男子高校生たちの葛藤と成長、教師との対立を描いた物語です。
舞台を観に行くにあたって予習はせず、ホームページのあらすじを読んだだけで挑みました。。
変な先入観を持たないために。
でも、少しのあらすじから勝手に想像膨らませてしまっていたので、思ってたんとちがう~となってしまったのも事実。
舞台はイギリスの進学校。8人の優秀な男子高校生の話。
ベテラン教師ヘクター(石川禅さん)は受験にあまり役に立たない文化や芸術について教えていた。
進学実績を上げたい校長はオックスフォード大学に通っていた若いアーウィン(新木宏典さん)を新たに雇う。彼は受験に有効な斬新な授業を行っていく。
生徒たちはアーウィンとヘクター、相反する考えを持つ二人の教師の間で揺れ動きながら、大学合格を目指していく(THE HISTORY BOYSサイトより)。
私はイギリスの受験事情をあまり知りませんでした。
貴族とかお金持ちの人と、一般庶民では進む大学も最初から決められていると聞いたことがありました。家庭環境で、生まれた時から将来が決まってるとか........。
これは少し古い偏見だったようで。
物語当時はサッチャー政権で、競争主義を取り入れ競わせることにより発展成長させる戦略。
そういうことが受験にも反映していて、それぞれの学校が有名大学への進学率を上げようとしている時代だったそうです。
そう聞くと新しく雇われたアーウィン先生は「ドラゴン桜」に出てくる桜木先生みたいに効率よく覚えなければいけないものを覚えさせ、受験テクニックを有無を言わさず徹底的に磨かせるような先生なのかと思っていました。
それもなぜか数学の先生だと。
自分が理系だったからかな。
歴史なんて受験にあまり必要ないでしょ、とこれも偏見でしたね。
高校生たちは歴史学科を目指す生徒たちで、受験科目は歴史に関する面接と小論文だけだったのです。
あ、だからヒストリーボーイズなんだ、って舞台を観ながら初めてタイトルの意味を発見して、少しうれしくなりました。
受験制度の違い、日本とイギリスどっちがいいのか?
生徒たちは日本でいうセンター試験(大学入学共通テスト)みたいなものをすでに受験していて、高得点をとっています。
ケンブリッジやオックスフォード大学を受験する資格を持っているのです。
日本でいう2次試験に当たるものが、面接と小論文なんだそうです。
しかも2次試験まで3カ月の猶予があるらしい。
学生たちはとても優秀で、余裕があり、ヘクター先生の楽しいけど受験に直接的には関係のない授業を楽しんで受けていました。
日本の優等生だとたぶん文句が出るところだと思います。少なくとも教育熱心な親御さんからはクレームがつくところ。
でも、イギリスの学生というか、ここに出てくる生徒たちは、バイトをしたり、校長先生の秘書といい仲になったりと、全然せっぱ詰まってない所がいいなと思いました。
そして、心に余裕があるのか生徒8人がみんな仲良し。
中にはユダヤ教の子もいれば敬虔なクリスチャンも、ホモセクシュアルの子もいるのですが、決していじめにならない、そういう雰囲気が好きでした。
日本のギスギスした受験生には考えられません。
娘は「心に残る授業もうらやましいけど、プレゼンのテクニックを教えてくれる先生って必要だと思う、大学でも社会に出てからでもとても必要なものだ」と申しておりました。
プレゼンの授業は確かに必要だと思います。
ただ、それを大学入試の合否判断に使うのはどうかと保護者目線で考えると首をかしげたくなります。
嘘でもいいから、奇をてらい、他の受験生にはない切り口で歴史を考察する必要があるとアーウィン先生は教えます。この子を我が大学で教えたいと試験官の先生に思わせる小論文なり面接時の応答なりを考えろと。
でもそれって、試験官の主観で合否が決められるということで、不公平な感じがします。
受験に苦しんだ親にしてみれば数字で判断してもらう方が公平でいいと思っちゃいました。日本みたいに筆記試験で。
でも、イギリスのように基本の試験をクリアすれば、最終試験は小論文と面接だけというのは、子供たちの人間性を豊かにするにはとても有効だとも思いました。
詩を覚えたり映画を観たり、恋愛したり、いろいろな人と接してコミュニケーションをとるということはその人を魅力的に育てるし、論文を書いたり面接を受けたりする上でもとても役に立つと思うからです。
ヘクター先生もアーウィン先生も生徒たちにはどちらも必要だったと言えます。
そして生徒8人全員みごとに有名大学に合格しました。
私も思わず客席で拍手してしまいました。
よかった、よかった。
すっかり受験生の親の気持ちでした。
性に関する事、文学だから? イギリスだから? 許されるの?
夫は「だいたい面白かったが少しお下劣な作品だったな」と申しておりました。
そう娘に伝えると腐女子気味の娘は「お父さん、まだまだだな」とのこと。
まあ、私もそれなりにBLマンガなどを見て育った一人なので、理解はできるのですが、心の底では夫と同じ感想です。
高校の教師が生徒に性的悪戯をする、これって今の日本なら炎上問題ですよね。
子供たちの心に深い傷を負わせ、将来的にもトラウマになるとか言って。
それがイギリスだと許されるのか、文学作品だと許されるのか。
昔、タレントさんが「不倫は文化」というような発言をして世間からブーイングを受けていましたが、私はその俳優さんの言いたいことはわかりました。
小説の中にはそういうことを題材にしたものが多くあるし、それは芸術だと認めるくせに、現実問題になると寄ってたかってみんなでたたきまくる、その感覚が私にはわからないんです。
後半でリーダー格の生徒デイキンが卑猥な言葉を使ってアーウィン先生に迫るシーンがあるのですが、私はそのセリフは必要なかったのではと思いました。
ちょっとショックでした。
それまでのBL部分やヘクター先生の悪戯部分はまだ許せたのですが、その一言でなんかこの作品の格が下がってしまったような気がしました。
要するに私も娘に言わせると「まだまだ」なんだと思います。
もう一つ理解できてないというか、不思議に思ったのは、リーダー格の少年デイキンが若い教師アーウィンになぜ惹かれたのか? ということ。
確かにアーウィン先生は人間的に魅力的でした。
最初、若いがゆえに虚勢を張っているところがあるように見えたのですが、生徒からレポートを返すときに投げて返さないでと言われると、次からはちゃんと置いていたり、ヘクター先生を紹介されるとすぐに握手しようと手を差し伸べるところなど、素直でいいやつじゃんと思えました。
でも、それだけではデイキンがアーウィン先生に惹かれる理由がわかりません。
デイキンだけがすごくアーウィンに惹かれた何かエピソードというかデイキンだけしか気がつかなかった何かがもっと分かりやすく表現されていればよかったなと思いました。
映画を観てさらに理解を深めたい作品
8人の高校生を演じている役者さんたちは24歳から20代後半の方々ばかりでしたが、完全にリアル高校生でした。
青春していました。
そして、私が感動したひとつが、目まぐるしく変わるシーンに合わせて机といすの配置を変えるのですが、それを高校生たちがスムーズに一つの間違いもなく移動させていたことです。
次はヘクター先生だからこの形ねというふうに単純なものではなくて、場面場面で微妙に違うのを生徒たちは少しの迷いもなく移動させていくのがすごいと感動しました。
「感動するところがそこかい」と突っ込まれそうですが........。
私にとってみれば3時間近くあるお芝居の長いセリフを覚えられるだけですごいことで、もう神様みたいなもんです。信じられません。
掛け合いの会話ならまだしも、歴史の話をただつらつらと一人でしゃべりまくるなんて、そんなこと私には到底不可能なこと。
一般人の私には想像もつかない時間と労力をかけて舞台というものは作り上げられているんだろうなと思います。
それが、この舞台は1週間の公演で終わってしまうなんてコスパ悪すぎです。
もう少し長ければ、私に自由になる時間と経済的余裕があればもう2回ぐらいは観にいきたかった作品でした。
座る席によって見え方も違ったでしょうし、感じ方も違ったでしょう。
新しい気づきがあったはずです。
ヒストリーボーイズ自体は映画にもなったということなので、なんとか映画を探して観たいと思っています。
でもそれは、また違ったヒストリーボーイズという作品なんだとは思いますが。
この舞台は2024年7月28日に千穐楽を迎えていますが、あらすじやキャストの紹介などはこちらのサイトhttps://cedar-produce.net/historyboys/ から確認することができます。
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