こんにちは、ひらりんです。

20年前、二人の子供を連れて主人の単身赴任先イングランド北東部、ニューカッスル・アポン・タインを訪れたことがあります。寒い地方なので、夏の温かい時期の3か月だけ。
帰国してすぐにまとめた文章が出てきたのでリライトしてブログに載せることにしました。
子供たちはすっかり成人しているので、忘れてしまっていた幼いころのことを読み返すと、写真のアルバムとはまた違った懐かしい気持ちになりました。

2階の部屋から見た景色

3か月でバイリンガルに育てるのは無理でも…前編

ABC大好き長女の英語学習歴

子供を連れて海外で暮らすとき、一番期待することはなんといっても、バイリンガルになるかしら、ということでしょう。
3か月の滞在ではまぁバイリンガルは無理としても、子供たちに少しでも英語に親しんでもらいたいというのが親心。2歳児と1歳になるかならないかの子供ふたりを連れて期待いっぱいに旅立ちました。

そもそも長女(N子)への英語教育は胎教から始まります。
待望の第一子でしたので、妊娠がわかった時から、7か国語のカセットを毎日のように聞かせました。出産してからも長男(A男)を妊娠するまではたまにですが聞かせていました。
かわいそうに年子のA男には、上の子に手がかかり胎教どころではなかったので、何もしていません。
ビデオでは「アンパンマンの英語ビデオ」がN子のお気に入りで1歳前から1日に何回でも観ていました。

N子が1歳4,5か月のころ、実家で、私が子供のころ買ってもらったABCの絵本を見つけ、アルファベットに興味を持ちました。すぐに、AとかMとか自分の好きなアルファベットを覚えてしまって読めるようになったのです。
そういうと、すでにイギリスへ単身赴任していた親バカお父さんは日本に帰ってくるたびに、アルファベットの絵本やカードをたくさん買ってきて与えていました。

これだけのことをしても、N子に渡英前には英語というものの認識はなかったと思います。つまり、絵本を見て「りんご、アップル」としゃべってはいましたが、赤くて丸い果物を見て、「りんご」という人もいれば「アップル」という人もいるということは、まだまだわかっていませんでした。
まあ、それは当然なんですけど。

「ハロー! マヨネーズ エヌコ」

イギリスに着いて最初にN子に教えた英語は「ハロー!」でした。N子はもともとあいさつ大好き少女でしたので、「ハロー」というと相手も「ハロー」と返事してくれるのがうれしくて、だれかれとなく「ハロー」というようになりました。
隣の家にお土産を持ってあいさつに行った時も、「ハロー」と「バイバイ」が上手だったので、あとで主人が隣の人に「おたくのお嬢さんは英語が話せるのか」と言われたほどです。
当初、私の英語力はすっかり衰えてしまっていたので、口から出るのは「ハロー」と「バーイ」ぐらい。高いお金と時間を注ぎ込んで、学生時代から英語を学んできたのに、2歳児と同じレベルだったのには、ちょっとショック。

次に教えたのが「My name is Enuko.」。
これをしばらくN子はどうしても「マヨネーズ エヌコ」としか発音できませんでした。それでも、隣のご主人にN子がそう言うと、「My name is Mike」と返事していたから、結構通じるみたいです。

英語との遭遇でポカ~ン

家から歩いて5分ほどのところにある教会で「Mothers & toddlers」をやっていると、一緒に付いて来てくれていた妹が見つけたので、長女と私だけ週に1回、通うことにしました。
イギリス滞在1か月近く過ぎた頃でした。息子は妹とお留守番。

「Mothers & toddlers」というのは、幼稚園に行く前の、よちよち歩きぐらいの子供たち(toddlers)を集めて遊ばせる、共同保育のようなものです。
お母さんたちもそこで、育児の悩みや愚痴をおしゃべりしあって、ストレスを発散させるというか、ウサを晴らしているようでした。私もそこで英語をしゃべる数少ないチャンスと思って、できるだけお母さんに達に話しかけるようにしました。
「紙おむつは、どこのスーパーが安いですか?」
「移動遊園地が来てるらしいけど、もう行った?」
ちゃんと辞書を引いて予習してから挑みました。

外人の子供たちと遊ぶようになると、少しはN子の英語力に影響が出るかな、と思ったのですが、それはちょっと期待はずれ。よちよち歩きの子供たちって、子供の中で遊ぶのは好きみたいだけど、みんなそれぞれ思い思いに遊んでて、会話しながら一緒に遊ぶというのは、まだちょっとしてなかったから・・・。

でも、N子にとって「英語」というものを認識する機会になったのは確かです。
初めて教会を訪れた日、久々に三輪車やそのほかの遊具で子供たちと遊んだN子は、帰りの時間になると「帰りたくない」と泣き出したのです。
それでリーダー格のお母さんがN子に向かって
「楽しかったね。今日はもうおしまいだから、おうちに帰って、ごはん食べて、ねんねして、おっきして、ねんねして、1週間たったらまたおいでね、わかった?」
というようなことを早口の英語でまくし立てたのです。

N子は泣くのも忘れて、ポカ~ンとした表情でそのお母さんの顔を見ていました。
これは彼女にとって、カルチャーショックだったのだと思います。
当時2歳半の彼女は、2語文どころかかなり微妙な日本語のニュアンスの表現もできていたし、親の言っていることはたいてい理解していました。
それが、いま何か話しかけられたのだけど、なんといっているのかまったく理解できないのです。

自分の頭の上でわけのわからない会話がされていても、それはいっこうに構わないのでしょう。散歩の途中ですれ違う人に「ハロー」というと、「あら、かわいらしいお嬢さん」とか、やっぱりわけのわからない言葉が返ってくることもあったけど、自分の発した言葉に対して反応があることがうれしくて楽しくて、意味が分からなくても、そんなことどうでもよかったのかもしれません。それに、ほめられていることは本能でわかるみたいだし。
英語の子供番組も、意味がわからないはずなのに、歌とダンスがあればそれだけで面白くてしかたないみたい。これはNHKの「おかあさんといっしょ」を、お座りがやっとできるぐらいの、日本語がまだそんなに理解できてない赤ちゃんが見て、楽しそうにしているのと同じ。

ところがいま、面と向かって自分に話しかけられているのに、何を言われているかさっぱりわからない。単語がわからないというのではなく、皆目見当がつかないのです。そりゃ、口もポカ~ンと開いちゃうでしょう。

N子に話しかけたリーダー格のお母さんは、今度は私の方を向いて、何やらペラペラ話しだしました。それがあまりの早口なのと方言で、さっぱり意味が分からなくて、私まで口をポカ~ンと開けてしまいました。
親子ふたりに口をポカ~ンと開けられて、そのお母さんはなんと思ったでしょうね。

長女の頭の中の”英語”

N子は、そんな経験を通して、”英語”というものの存在を認識していきました。「うさぎ」には別に「RABBIT 」という呼び名があって、それを英語というんだ、と。「バラ」は「 ROSE 」、「じゃがいも」は「 POTATO」、「トマト」は「 TOMATO」。英語がわからないときは「イチーゴ」「ブウター」というふうにアクセントを勝手につけて、自分で英語を作っていました。
私が英語で近所の人と話したりしたのを聞いた日には、巻き舌で「ペラペラペーラ」と、お笑い芸人が英語のしゃべりをまねるみたいなことをするのには笑っちゃいました。誰もそんなこと教えてないのに。
やっぱり英語ってそんなふうに聞こえるんですね。

N子は、自分たちが話している言葉(日本語)のほかにも言葉があって、それを”英語”というんだ、ということをわずか2歳の幼い頭ですでに理解していました。これはすごいことだと思います。これだけでイギリスに来たかいがあったというものです。

”英語”という概念がなければ、2歳の子供に「じゃがいもはPOTATOよ」といくら教えても「なんで、じゃがいもはじゃがいもじゃないんだろう」と、理解に苦しむところです。

ハーフとかで、生れた時から2か国語に接している子供は、”日本語””英語”という概念なしに、ごく自然に2つの言葉が頭の中に共存しているのでしょう。バラには「バラ」と「ROSE」という2つの呼び方があるんだというふうに。

N子の場合は、「バラは英語でROSE」とワンクッション置かなければなりませんが、先に日本語が頭に入っているのでしかたありません。でも、もっともっと英語に触れる機会があれば、このワンクッションは限りなく小さくなって、なくなってしまうんだろうと思うのだけど…。
わずか3か月ほどのイギリス滞在では無理な話です。

そう、無理と思っていたのですが、N子は結構いい線まで行って、単語だけでなくちょっとしたセンテンスも話せるようになっていくのですが、それは「3か月でバイリンガルに育てるのは無理でも…後編」に続きます。

「子供って、こうやって英語を身に着けていくんだ」というステップを目の当たりにしたエピソードなどを次回にまとめます。

girl in red dress playing a wooden blocks
にほんブログ村 主婦日記ブログへ
にほんブログ村