こんにちは、ひらりんです。

主人が赴任しているイングランド北東部、ニューカッスル・アポン・タインに、子供ふたりを連れて訪れた時の体験記第3弾です。長女は2歳半、長男は1歳になるかならないかという頃のことです。
今回は息子が急に高熱を出した時のお話。20年も前のことなので今とは医療現場もずいぶん変わっているでしょう。それでも、何かの参考になるかもと思い、昔の原稿をリライトして掲載しま

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これはイメージ写真です

外国で子供が病気にかかったら、どうしましょう!? 前編

イギリスには小児科の医院がない!?

イギリスに転勤が決まった時、主人は「イギリスで幼い子供を育てるのは大変だから、家族そろって引っ越しするのはやめよう」と、単身赴任することにしました。
その理由の一つに、イギリスの医療制度があります。

日本では、子供の具合がちょっとおかしいなと思った時、すぐに駆けつけることができる(もちろん平日ならばの話ですが)小児科、もしくは内科のお医者さんが町のあちこちにあります。
ところが、イギリスには小児科医院なんてないのです。

イギリスの医療制度は日本と根本的に違っています。福祉国家なので、イギリス国民やイギリスに長期滞在している人はみんな基本的に医療費が無料です。GP(General Practioner)というものに登録し、おなかが痛かろうが、耳が痛かろうが、お尻が痛かろうが、赤ちゃんだろうがおじいさんだろうが、どんな場合(歯医者は別だけど)でも、誰でも登録したGP医師に診てもらうのです。そこで、これは自分の手に負えないと医師が判断した時だけ、大学病院や専門の病院を紹介してもらえるというシステムなのです。

GPとは、日本語で言うなら「主治医」といったところでしょうか。
その人の病歴を小さい時から一貫して診ているので信頼できるし、日本のようにちょっとした風邪ぐらいでも大学病院におしかけるということもできない制度なので、合理的と言えば合理的なのですが…。
そのGPというのが、日本の町の医院のように、診療所にいつもいて次々に患者さんを見ているというならいいのですが、電話をしてもなかなかアポが取れず、やっとアポが取れても3日後だったりするのだそうです。
これでは急に様態が変化する赤ちゃんと一緒にイギリスで暮らすのは心配です。実際に主人の職場の人(日本人)で、子供が病気になり、GPに診せても一向にらちが明かなくて、やっとたどり着いた病院で、「もう少し遅かったら取り返しのつかないことになっていたよ」と言われたそうです。

さて、イギリスに着いて最初に主人から言われたことは、とにかく、子供たちにケガをさせるな、できるだけ病気にさせるな、ということでした。けがをして万が一救急車にを利用した場合、保険料(税金)を払っていない旅行者などは実費(おそらく数十万円)を支払わなければないというのです。

また、ここは白人社会で、東洋人の子供など親が見ていないところで何をされるかわからない、ましてや言葉もわからなかったら、助かる病気も助からない、あげくは臓器まで取られてしまうかもしれないぞ、と脅かされました。
白人社会で苦労して働いている主人は、いつの間にかイギリス人に対して偏見で凝り固まってしまっているようでした。主人が言っていることはおそらくほとんど被害妄想なのでしょうが、右も左もわからない外国の地では、何ごともなく過ごすのが一番です。

ところが、イギリス生活1か月を過ぎたころ、長男が熱を出してしまったのです!

子供が発熱! 病院へ!

長男A男が1歳の誕生日まであと1週間ほどのことでした。
その日は朝から雨で散歩にもい行けず、子供たちは家の中でおとなしく(?)遊んでいました。午前中は別に変わりなく、昼ご飯もふだん通りに食べていたのですが、だんだん様子がおかしくなってきました。
熱っぽくなってきて、計ると38度近くまであるではありませんか!
その後も上がる一方。

これまで長男が熱を出したのは5か月前に1度だけ。上の子の風邪がうつって40以上の高熱が1日続いたことがありましたが、2日目の夜には熱は下がっていました。
今回もこのパターンであることを祈りつつ様子を見ていました。

イギリスでは医者に診せられないからということで日本から用意してきた薬は、解熱剤と抗生剤、咳止めなどの風邪薬。日本のかかりつけ小児科で渡英前にわけを言って薬を出してもらったのです。
医者は、「病気が続くようなら医者に診せるのが一番。どうせ薬は1か月ぐらいしか持ちませんし」と、それぞれ1週間分しかくれませんでした。

ところが主人からはこんなんじゃ少なすぎると怒られました。主人は男の子が高熱を出すと生殖機能をやられると言ってとても嫌がります。38度5分を越えたら解熱剤を使えと言います。私はこの意見にあまり賛成ではありませんでした。だって、身体が病気と闘うために熱が出ているのだから。

しかし、医者に行けない異国の地では私も強気にはなれず、主人の言うとおりにするしかありません。でも、解熱剤を使っても熱は一時的にしか下がらず、すぐに39度ほどにあがってきてしまします。そこで、もらった来た抗生剤も飲ませましたが、やっぱり熱は下がりません。咳も鼻水もなく、風邪ではなさそうです。

私の頭をよぎったのは「突発性発疹」いわゆる突発疹という病気でした。長女の時も、みんなが6か月ごろにかかるというのにかからず、11か月になってからこれにかかりました。A男もまだ突発疹にかかっていません。
この病気ならだれでもかかる病気だし、命にかかわるものではないから、そんなに心配する必要はないはず。ですが、やっぱりここは異国の地。どんな病気がはびこっているかわかりません。そりゃ、用心にこしたことはありません。

体温計とにらめっこの一晩が過ぎ、翌朝になって息子の熱が40度を越えてしまいました。解熱剤は6時間おきなのであと3時間たたないと使えない時でした。
このままにしていて、長女にまでうつったらどうしようもないと判断した主人は「病院に連れて行く!」と言いだしました。

えっ、病院に連れて行けるの?
主人が言うには、職場の人から小児科外来のある大きな病院、ロイヤル・ビクトリア・インファマリーというのがあると教えてもらっていたというのです。
ただ、そこで、GPの紹介もない保険料も払っていない東洋人の旅行者がどんな扱いをされるかはわからないけれど…。

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イメージ

待合室が診察室のイギリスの病院

ニューカッスルの都心に建つその病院は築100年は経っていると思われる、まるでお城のような石造り。中は迷路のように廊下が長く続いていました。小児科の救急外来の受付に、人に教えてもらってやっとたどり着くことができました。
住所や連絡先を聞かれ、「GPの紹介は?」と尋ねられました。旅行者なのでGPの登録をしていない旨を伝えると、了解をしてくれたのかどうか、しばらく待ってと言われました。

その時長男はあちこちと動きまわされたせいか、ぐ~んと熱が上がってしまって41度もあり、ぐったりとしていました。熱を計りに来た看護士がこれに驚いて、「すぐに救急外来病棟に行きましょう」と、言ってくれました。なんとかGPの紹介なしでも追い返されずに済みました。

看護師の後を追って廊下をえんえんと歩き、病棟の中の診察室に着きました。診察室というか待合室というか。そこにはベビーベッドと椅子が2脚、その他にテレビやおもちゃ、紙おむつ、おしり拭きなどが備えてありました。
ガラス張りで廊下から丸見えの診察室兼待合室が、その病棟の中には10室近くあり、医師の方が順々にその部屋をまわって診察していくというシステムらしいのです。

日本人の固定観念を完全に打ち砕く素晴らしいシステム!
医師に診てもらうまでの時間がかかるのは日本も同じですが、待合室の長椅子に熱のある子供を抱いてすわり、うるさいまわりに気を散らせながら、じっと待つのとでは雲泥の差があります。
やはりGPという関所があり、患者数が限られてくるからできるシステムなのでしょう。

その部屋に通されてからほどなくして女性のスタッフが入ってきました。病気の経過を聞き、A男の様態をちょっと診てから熱を計ると「解熱剤を飲ませるから、体重を量りましょう」と言って、部屋を出て行ってしまいました。
主人と私はこの女性を医者だと思い、これで診察が終わったのかとガックリしてしまいました。
「どうして熱があるのか、何の病気なのか知りたいから病院に来てるのに…。」というと、
「イギリスの病院なんて所詮こんなもんだよ」と、偏見だらけの主人は、普段自分が言っていたことが正しかったと言わんばかり。
ところが、彼女は医師ではなく看護師でとりあえずの処置をしに来ただけとわかり一安心。

体重の量り方もちょっと一筆。男の人が大人用の体重計を持ってきて、まず自分の体重を量り手の甲にボールペンでその値を書き、次に長男を抱っこしてもう一回量り、その差から子供の体重を割り出すのです。こんな大きな病院で赤ちゃん用の体重計もないのかと笑ってしまいました(心の中で)。

解熱剤を飲ましてもなかなか熱の下がらない長男に、その看護師は扇風機を持ってきました。できるだけ服は少なくして、風をあてて熱を取るようにというのです。
小説などで知ってはいましたが、日本と西洋との風習の違いを目の当たりにした感じでした。日本では熱があると、氷のうや氷枕で頭のまわりとあとはわきの下など部分的に冷やし、布団をかぶって暖かくして寝かせておくのが常識ですが、西洋ではひどいのになると裸にして氷の入ってる水風呂に入れるというのも聞いたことがあります。
体を冷やして熱を取るというのはわかりますが、私自身寝ているときに風にあたるとエネルギーを取られるようで嫌いなので、扇風機のスイッチは入れませんでした。風邪はひいてないのに、風邪ひかされたらたまりませんもの。

しばらくして、やっと医師に診察してもらい、病歴やアレルギーの有無、予防接種の有無など問診され、医師が出した結論は、
「いろいろと検査をして診断し、それから薬を処方します。そのために今日は入院してはどうでしょう。急に様態が悪化しても、ここにいれば処置ができるので安心ですし。入院の準備のためにいったん家に帰り、午後9時ごろまでに戻ってきてくれればいいですよ」というもの。
その口ぶりは、最近日本(という未開の地)から来たのだから、どんな病気を持って来たかわからない、とでもいいたげ(被害妄想?)。
こっちはイギリスに来たためにわけのかわらない病気にかかっちゃったんじゃないかと心配しているのに。

時刻はすでに夕方の6時。昼過ぎに病院に着いたのに。この間、実は尿検査をするように言われていたのになかなか尿が出なくて、診察した医師も勤務交代して2人目だったのです。

上の子は、日本から一緒に着いて来てくれた私の妹が面倒を見てくれていました。
突然入院ということになって、妹がいてくれたことに本当に感謝しました。長女を家にひとりで置いておくわけにはいかないし、かといって私一人で病院に付き添っても英語がチンプンカンプンで、まったくらちが明かないところでしたから。

イギリスでの入院の様子は後編にまとめます。
はたしてA男の病名はなんだったのでしょう?
もう成人して、元気に学校に通っているのでなんの心配もないのですが、当時は本当に焦りまくった出来事でした。

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