こんにちわ、ひらりんです。
11月4日お昼の部の舞台『赤ひげ』を鑑賞してまいりました。
娘と夫と一緒です。
テレビドラマでも赤ひげを演じていた船越英一郎さんは、なんとこの作品が初舞台なのだそうです。いつもはテレビで活躍されている方ですものね。
夫は1972年のテレビドラマで、小林桂樹さんが主演された『赤ひげ』を子供の頃よく見ていたようで、今回の舞台も興味があったようです。
でも時代劇にあまり関心のない私と娘が、なぜ観にいきたいと思ったかというと........
この舞台には、新木宏典(元・荒木宏文)さん、崎山つばささん、高橋健介さんと知っている俳優さんが多数出演するということで、これはぜひ観に行かねばということで観劇した次第です。
歴史ある劇場での舞台鑑賞はハレの日のイベント
今年明治座は150周年の記念の年で、今年1年を通してお祝いの出し物をしているそうです。
3月に新木さんが出演されていた大逆転!大江戸桜誉振(オオエドカーニバル) https://www.meijiza.co.jp/lineup/2023/03/ もその一環の出し物でした。
3月は娘の引越しや私たち夫婦の家探しでバタバタしていて観にけなかったので、今回が初めての明治座でした。
150年前というと明治元年。
明治座という名前になったのは明治26年だそうですが、その前身が今から150年前に芝居小屋を開業したらしいです。
東京で最も長い歴史を持つ演劇劇場、歴史と伝統が脈々と受け継がれてきているということが劇場に入ると肌で感じることができました。
館内には売店やお食事処があって、開演前、幕間の時間に食事をしたり買い物をしたりしてめいっぱいお芝居を楽しむ事ができる空間になっています。
ただお芝居を見に行くだけでなく、お芝居を見に行くその日をその人の特別な1日になるようにおもてなししてくださっているように感じました。
幼い時家族で相撲を観にいったことがあったのですが、一張羅を着せてもらっていただいたお弁当をマス席で食べながら観戦した、あの時の高揚感を思い出しました。
私なんて、同じ出し物を何回も通って観れるほどの経済的余裕がないので、本当に特別な1日なんです。
私が座った席の隣一帯は、どこぞの消防団ご一行さまで、お土産の紙袋をもらい、幕間30分の間には広い部屋で食事をされる手配になっていたようで、明治座での観劇が楽しみにしているレクリエーションのひとつになっているように見えました。
演出をされていた石丸さち子氏がどこかに書いておられたと思うのですが、まさしくハレの日の行事、非日常を味わうことができる空間という感じです。
そして、私たちが観劇した日は、たまたま向島芸者衆の方々も舞台を観に来られてて、私たちが入場する際にはお出迎えしてくださいました。
とても華やかで、ワクワク感がより一層膨らみました。
明治座では幕間に座席での飲食も認められていて、いろいろな種類のお弁当も用意されていました。
私たちは前もって予約しておいた見習い医師の特典ブロマイド付きのお弁当を受け取って、幕間でいただきました。
ボリューミーで30分でいただくのはちょっと大変でしたが、劇場の座席で飲食なんて他の劇場では考えられないことなので、ちょっとドキドキしながら食事をさせてもらいました。
江戸名物深川めしの上にカリッと焼いたチキンがのって、とてもおいしかったです。
レストランでは、出演俳優のプロデュースしたメニューなんかもあり、そちらも開演前にいただくことができました。
もっと開場を早くしてくれれば、ゆっくり劇場でのお食事や買い物ができ、展示物もじっくりと見ることができたのにと、そこのところが少しだけ残念でした。
明治座の公式サイトはhttps://www.meijiza.co.jp/ です。
『赤ひげ』は見習い医師の保本登の成長物語
舞台は新木宏典さん演じる保本登が客席の通路を通って舞台に上がるところから始まります。
長崎で最先端の医学を学んだ若い医師、保本登は御目見医になって藩主に仕えることを目指して江戸に帰ってきました。
ところが江戸にもどると、通称赤ひげこと医師新出去定が医長を務める小石川養生所に行くように言われます。
そこは貧しい人たちの病院で、満足な設備もなく保本いわく「日のあたらない便所のような所」でした。
保本は、最新の医学を学んだ自分はこんなところにいるべきではないとふてくされて、赤ひげ先生のいうことを聞きません。
頭でっかちで、一本気で、青臭い青年を新木宏典さんは清々しくはつらつと演じていられました。
長崎で最先端の医学を学んだ自分がなぜこんな汚い病院で働かなければならないんだ、というエリート坊ちゃんと書けば、どんな嫌な性格の青年かと想像しますよね。
ところが保本はただただまっすぐな気質で、自分が身に付けた知識を存分に発揮できる設備の整った最新の病院で、思いきり自分の腕を試したい、というやる気に満ちて帰ってきた心の優しい青年なんだろうな、と私は思いました。
貧乏人をさげすんだり、汚い長屋だからといって顔を背けたりしなかったので。
貧しい家庭の少年、長次に対する態度も、決して子ども扱いせず対等に話をしているところからも、この保本という男はいいやつなんだと思わせてくれました。
赤ひげ先生に付いていろいろな患者を診、命にふれ、死に対面し、成長した保本は、当初の予定通り藩医なるように赤ひげ先生に言われます。
ところがあんなに御目見医になりたがっていた保本はその勧めを断ります。
医療の届かない末端の人々の暮らしを見てしまった保本は、この療養所で貧しい人たちを診ながら、無知な人々の意識を変え、日本の医療を変えていきたいと赤ひげ先生にキラキラした目でいうのです。
自分にはそれができると!
先生のもとで修業させるのは保本の父上の意向だったらしい。
小石川療養所で経験を積ませることでただ病を診るだけの医師ではなく、人間を診る医師として成長させたいと考えたのでしょう。
そして、御父上の目論見どうり保本は立派に成長したのです。
でも、私も療養所に残らずに藩医になる方に賛成でした。
中央で出世してある程度の権限を持つことができれば、末端にまで届く医療体制の仕組みづくりに意見することができるのではと思うからです。
でも、保本は残ることを選びました。
自分なら末端からこの不条理な世界を変えることができると、若さゆえの無鉄砲な志が、お芝居を観た後に、なんとも気持ちの良い感情を残してくれました。
取り上げているテーマは深刻で重たいものでしたが、舞台を観た後の感情はなんとも清々しく気持ちのいいもので、もういっぱいいっぱい拍手をしても、立ち上がって拍手をしても、その感情は抑えられないぐらいのものでした。
江戸時代のお話だけど、現代社会を映す鏡
私は山本周五郎氏の小説『赤ひげ診療譚』を読まずにこの劇を観に行きました。
どうしたって長い小説を劇にするわけなので、エピソードをはしょらなければならないはずで、そのはしょられた部分の知識を小説を読むことであらかじめ頭に入れておくと、もし展開に無理な場面があっても、脳内で小説を読んだ知識を使ってお話を補填してしまうでしょう。
そうなると舞台だけから受ける感動じゃなくなる気がするんです。
そんなわけで小説を読んでは行かなかったのですが、国会の中継映像はよく見ていたので、心に刺さる場面がたくさんありました。
赤ひげ先生役の船越栄一郎さんがカーテンコールや取材でも言われていた言葉、
このお芝居は江戸時代のお話ですが、時代を越えて「今」を映す鏡のような舞台
本当にそうだなと思いました。
先の国会で医師の収入を減らす提案をされていた議員がいました。
そりゃ一部の、例えば美容整形医とかなら多くの収入を得ているかもしれませんが、24時間働き詰めで時給にすると1000円ほどの若い医師がたくさんいるのです。
過労死している勤務医も問題になったばかりじゃないですか。
コロナ禍では、自分を省みず患者に寄り添う医療従事者がいたからこそ乗り越えることができたのではないですか!
また、年金だけでつましい生活をしている老人の医療費を2倍にしたりと、庶民の生活の実態を知らない権力者が勝手に政治をまわしています。
何をやっても生活が楽にならず、行き詰まる人たちがいるのは昔だけのお話ではありません。
赤ひげ先生はお金持ちの殿様から多額の医療費をもらっていました。
それを見て保本がびっくりしていましたが、赤ひげ先生はそれを助成金だけではやっていけない療養所の資金に使っているのです。
我々庶民が一生懸命働いているから社会はまわっている、お殿様たちはそのうえで生活しているのだから、庶民が元気でいられるようにお金をまわすのは当たり前、みたいなことを言ってたけど、そうだそうだと声なきツッコミを心の中で入れてました。
この言葉を現代の政治家に聞かせてやりたかったよ。
ってX(前ツィッター)に書いたら、同じように政治家に見に来てほしいという意見の人が結構いました。
不条理の中のどうすることもできない貧しさ、病気の苦しさ、死という重いテーマを扱っていて、現代もリンクしていろいろ考えさせられるお話でした。
でも、前にも書きましたが、役者さんたちの演技が明るく爽やかなので、とても気持ちの良い感動で帰途に就くことができる作品でした。
そして、もう一度じっくりと赤ひげの世界に戻りたいと、小説「赤ひげ診療譚」を通信で申し込んだところです。
このブログでは観劇日記以外にも健康のことなど(引越しが忙しくて健康生活おくってなかったときのヘモグロビンA1cの値を記録しておきます)も書いております。
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