こんにちわ、ひらりんです。

今回は映画「漆黒天ー終の語り」を観にいった時の感想をまとめた記事です。

ネタバレがありますので、映画をこれから観にいこうと思っている人は読まないでください。

絶対なんの予備知識もなく観た方が面白いからです。

でも、観る気はない、観るかどうか迷っているという方は読んで参考にしてください。

絶対観たくなると思います!

Sun Eclipse 2009 (NASA, Hinode, 7/22/09)

生まれて初めて舞台挨拶付きの映画を観に行きました

荒木宏文さんの主演映画があると知った時、それが舞台と連携していると聞いた時、舞台を観るんなら映画も絶対に観ないといけないと思いました。

ファンクラブに入っている娘はさっそくチケットを申し込んでいましたが、私はいつ頃行けるかわからないので行くタイミングでチケットを買おうと思っていました。

そしたら、なんと舞台挨拶があるというではありませんか!

おばちゃんには難しかったけどなんとかPCと格闘してチケットを手に入れました。

夫から早めに行った方がいいと言われ、現地に1時間前には着きました。

2022年6月26日 横浜ブルク17時20分からの回です。

ミュージカル真剣乱舞祭2022の千秋楽のライブビューイングも40分違いで予定している映画館でした。

実は真剣乱舞祭のライブビューイングも観ようか悩んだ頃があったのですが、配信を観ることにしてよかったです。まるかぶりでした。

早く着いたので映画館前のベンチに座っていると、ランダムフォトの交換をする人たちを何人か見かけました。

初めて会う人たちのようで 、スマホを見せ合い確認し、あらかじめメールなどで約束をしていたブロマイドを交換し合っているようでした。

若い子たちには、推し活をしている子たちにはこういう文化があるんだなぁと、自分の知らない世界を垣間見るような気分でした。

ネタバレできないキャスト達の仲のよいおしゃべり

舞台挨拶に来てくださったのは、立ち位置左から長妻怜央さん、松田凌さん、荒木宏文さん、唐橋充さん、松本寛也さんの5人です。

松本寛也さんがMC役をするのが通例になっているようでした。

今回が6月24日から始まった舞台挨拶付き映画上映の最後の回になります。

進行もなれたもんです。

上面に穴の開いた、質問の紙の入った箱から松本さんが質問をランダムに引いてそのテーマをみんなで自由に話すという形式です。

監督・坂本浩一氏の印象について

まずは監督、アクション監督の坂本浩一氏についてです。

アメリカでも活躍している坂本浩一監督を皆さん絶賛されていました。

いつもニコニコしていて、怒らない、いつ寝ているのかというぐらい働いているのに元気。

松本さんが「これは言ってもいいのかどうか、言ってしまうと……赤や青の薬を飲んでいるところを見てしまったんですよ。薬を飲んで元気を保っているんだなと……」

すると荒木さんは外国の薬はなんであんな奇抜な色なのかと、そこのところを広げようとして、唐橋さんが目の色が違うので日本人とは色の見え方が違うので派手な色を使うのではないかと。

坂本監督はいつもすごくほめてくれたと皆がいうと、唐橋さんは「いいな、僕はほめてもらえなかった」と少しいじけていました。

すると、荒木さんが「じゃあなんて言われたの?」と聞いたところ

「はい、OK! だけです」と唐橋さん。

「OKって、ほめられてるじゃん! しかも英語で!」と、フォローというか慰めというかわけわからないことを言う荒木さんでした。

共演者へのクレーム、もしくは感謝したいこと

次に引き上げた紙は「共演者へのクレームや感謝したいこと」というテーマでした。

荒木さんはキャストではなくスタッフの知り合いから大好きな上生菓子、にっかり青江のキャラの和菓子を作ってもらって差し入れしていただいたことを話されていました。

その和菓子の写真はずいぶん前にインスタに荒木さんがあげていたので知っていました。

荒木さんはそういう人と人とのつながりに感謝したいと話していましたが、他の人たちは上生菓子に食いついていました。

「ジョウナマガシ?」「それは何?」「和菓子? どこで売っているの?」「ジョウナマガシ、銀座でも買える?」と、上生菓子というワードにツッコミを入れる周り。

「そんなお菓子が似合う大人になりたい!」という言葉に荒木さんは「でも、ピザポテトもいいじゃない」と、今度はピザポテトでひとり話を広げて行ってました。

荒木さんへの印象

最後に荒木さんの印象を周りの人たちが話していました。

「誰よりよりも芝居に没入している」

「ザ ストイックという人」

「おはようございますって入って来た時のオーラがもうストイックだった」

「海のような穏やかなオーラの時もあれば、山が動くかと思うほどの覇気をまとっている時もある」

「歩いている速度が速いのか、遅いのかわからない時があった。速い動作がゆっくり編集がかかっているように見えるときがあった」

そんな感じで終始わちゃわちゃにぎやかに男5人がおしゃべりするという舞台挨拶でした。

わちゃわちゃ楽しげにおしゃべりすることで、肝心の映画の話をしないようにしていたとも思えました。

ちょっと映画の話をすると、ネタバレに触れる恐れのあるストーリーなので後から考えると意識して話をそらそうとしていたのかと思います。

dark green rough surface

主人公目線で観るとどうしても名無しに肩入れしたくなる

公式から発表されているストーリーは……。

喜多はある日、町でぼろを着た男を助ける。記憶を失っているその男を喜多は「名無し」と名付け、狂言作者の玄馬とごろつきの邑麻兄弟たちと、男の過去を探る。彼らは名無しが過去に愛するものを失った凄腕の剣士で、多くの刺客に狙われていると知るのだが……。

予告動画もアップされているので、何度もそれを観てから本編に挑むと、主人公名無しに感情移入しているので、どうしても主人公目線で物語を観ることになります。

主人公が悪いことをするわけがない、悪いことをしてもそれなりの理由がある、悪役だとしてもどこか共感できる部分があるはず、と、どうしても主人公側に立って観てしまうんです。

映画は最初からすさまじい殺陣から始まります。

冒頭から、思わず「ひぇ」って声が出そうになるくらい人がバタバタと名無しによって殺されていきます。人が死んでいくことになんの躊躇もなく、刀が振り下ろされていくのです。

でも、命を狙われている主人公に気持ちがいっているので、切りに来る方が悪いと思ってしまう私。

荒木さんがこの映画が始まる前にさんざん雑誌などのインタビューで、「何にでも裏と表があり、表だと思っていたことが実は裏だったり……」的なことをおっしゃっていたので、実は名無しが極悪人で、命を狙われていても仕方がないことを過去にしているかもしれない、とちらっと思ったりもしました。

それでも名無しを狙う侍たちの中に鈴木裕樹さんもいたので、ゲキレンジャーとは違って今回は荒木さんの方が正義の味方で鈴木さんの方が悪役ね、なんて思いながら観ていました。

ところが、これはすでにネタバレになっていることなのですが、鈴木さんたちのいる名無しの命を狙う侍集団の中にも荒木さんがいたのです。

つまり、お侍さん達の中にいる荒木さん演じる陽之介と名無しは双子だったのです。

荒木さんは一人二役、双子の役をやっていたのです!

実際は、赤ん坊のころに捨てられた旭太郎と武家の家で大事に育てられた陽之介、そして、なぜか記憶を失っている名無しの3役をこなしていたことになります。

そして、この名無しがはたして、旭太郎なのか陽之介なのか最後まではっきりとわからないのです。

パンフレットでは旭太郎となっています。素直に考えればそうなんです。

でも、名無しが「自分は陽之介だ!」と訴えるのを、私はどこかで信じてあげたいという気持ちが何度もこみ上げてきました。

名無しに肩入れして観ていますからね。

orange clouds during golden hour

少女マンガ家になりたかった末満健一氏の脚本

育ちが違っても生まれ持った品は変えられない

ひとり3役というのはとても難しいことだと思います。

荒木さんは記憶喪失の役はその人物の設定を何も考えなくていいので、こんな楽な役はないと言っていました。

まぁそれはおちゃらけで言っていたにすぎないと思います。

だって、いくら記憶がなくても身についたものは隠せません。

誰に習ったものではなくただただ生きるために身につけた剣と、子供のころから道場できちんと教わり身につけた剣では全然違うはずだから。
剣以外でも、座り方や箸の持ち方、小さいころから身についた所作は、いくら記憶を失っても変えることができないはず。

だから、荒木さんは名無しがどっちなのか分かったうえで、でも記憶はなくなっているという難しい人物の設定を理解し演技しているのだと思います。

名無しが「自分は陽之介だ」といくら言っても、周りが旭太郎と見ているんだから、そうなんだろうと思うし、陽之介だったらいくら自分の命を狙われても、助けてもらった恩もある、愛する妻の妹をいとも簡単に切ったりできるわけがない。

つまり名無しは旭太郎でいいのかと結論を出してしまう。

そこで私がふと思い出したのは竹宮惠子氏の短編マンガ「そばかすの少年」でした。

身寄りのない赤ちゃんが田舎に引き取とられ少年へと成長するのですが、頭がよく品があり、周りの田舎の人たちと違っていました。後に実はいいところのお坊ちゃんだったということが判明するのです。

私はこのマンガを読んだ当時、「生まれより育ちだろ」と心の中で突っ込んだんですが、案外育てられた環境では変えられない持って生まれた品というのはあるのかもしれません。

だとしたら、同じDNAを持つ双子だと、環境が違っても醸し出す空気感とか品性というのは同じかもしれないなと思うのです。

そう考えると、名無しは旭太郎なのか陽之介なのかわからなくなってしまいますが。

empty paved street in historic town in japan

一卵性の双子の持つ不思議なつながり

クライマックスは名無しと陽之介の街の中での殺陣のシーン。

最後に名無しは陽之介の格好を真似るので、もう誰もどっちがどっちかなんてわからなくなります。

旭太郎と陽之介のちがい、なんかなかったっけ。今までの中で、旭太郎だけの特徴、なんか言ってなかったっけ。

そのすさまじい殺陣の中で、私は一生懸命振り返っていました。

そうだ、旭太郎は生まれて今まで笑ったことがないんだ、そう、じゃあ笑った方が陽之介じゃん、そうそう、なんかの拍子に笑ったら、そっちが陽之介! 決まり!

そして最後の場面。勝ち残った一人が日の光を浴び、こっちを向いて微笑むのです。

そうか、そうきたか!

笑ったことがないというフレーズを何度となく使って、ここで笑った顔を持ってくるのか……。

これで、もう永久的にどっちがどっちかわからなくなってしまいました。

ネットではいろいろな考察があがっていました。

生き残ったのは旭太郎だ。いや陽之介だ、とか。旭太郎も陽之介も同一人物だったりして、とか。家族を殺したのは陽之介の方だったのでは、とか。極悪非道なのは陽之介の方で、それを旭太郎が守ろうとしていたんだという。 

私はそんな考察を読みながら、萩尾望都氏の「半神」という短編マンガを思い出していました。

腰の部分がくっついたまま生まれた一卵性双生児の女の子の話です。一人はもう一人の栄養まで奪ってしまうので、きれいに成長するのですが、脳が完全ではないのか話もできないし自分で歩くこともできません。もう一人は頭脳明晰で歩くなどの運動もできるのですが栄養が行きわたらないので痩せてて骸骨のように醜いのです。このままでは共倒れになってしまうということで二人を分ける手術を受けます。すると今まで骸骨のように醜かった方がきれいになり(栄養が奪われなくなったので)、きれいだった子は骸骨のよう痩せこけて、やがて死んでしまうのです。残った子は、あの痩せて死んでしまった子は実は自分ではなかったのかと思い至るという話です。

同じDNAを持って生まれた双子には双子にしかわからない世界があるのだと思います。あっちも自分、こっちも自分。自分たちにも区別がつかない、二人なんだけどひとりというか……。

自分の片割れがいきなり目の前に現れた時、自分はどう反応するのか?

それはもう、精神世界でつながっている双子でしかわからないことなんだと思うのです。

この映画の脚本家は舞台刀剣乱舞などの脚本、演出で有名な末満健一さんです。

ニコニコ動画で漆黒天の宣伝番組をやっていて、そこで末満さんが昔マンガ家になりたかったんだと知りました。流れてくるコメントを見ると少女マンガの方らしいです。

それを聞いて私はなんか腑に落ちたというか、納得したというか。

末満さんの代表作「TRUMP」シリーズを最初観た時、その世界観が萩尾望都氏のマンガを彷彿とさせるものだったので。

「末満さん、絶対、萩尾望都氏のマンガ好きでしょう」 と今なら言えます。

そして、この映画でも双子というものの考え方が少しは影響されているんじゃないかなと私は思うのです。

漆黒天はムビステという企画で、映画と舞台が連携した作品になっています。

今回は映画「漆黒天―終の語り」の前日譚が舞台「漆黒天ー始の語り」です。

映画を見ていても、何度も何度も裏切られた感を味わうこのドラマ。

きっと、映画を観てみんながあれやこれやと思いをめぐらしたところで、舞台を観たらすべてが裏切られてしまうのではないかと、今から楽しみしかありません。

light sun cloud japan

ムビステ「漆黒天」についての情報はホームぺージ 映画『漆黒天 -終の語り-』 (toei-movie-st.com)  をご覧ください。

また、映画をご覧になった際のチケットの半券は、舞台観劇の際に持って行くとプレゼントがもらえるらしいので捨ててはだめです。舞台を観にいくとき、必ず持って行かなくては!

娘にその話をしたら、
「知らなかったー! 捨てるところだった―」
と言っていたので、情報が行き届いてないかも。皆さんも気を付けて!

black and white striped textile


この他にも荒木宏文さんの舞台についての感想を書いた記事があります。

 [「にっかり青江 単騎出陣」がおばちゃんの生活を変えてしまった話

「荒木宏文主演の舞台「演劇の毛利さん vol.1 天使は桜に舞い降りて」を観てきました 」(https://hirarin.blog/tennsi_sakura

などもあわせて読んでくださるとうれしいです。

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