こんにちは、ひらりんです。

少し時間が空いてしまったのですが、イギリス滞在中に1歳にもならない長男が高熱のために入院してしまった話の後編です。

20年前の体験記。主人がイングランド北東部、ニューカッスル・アポン・タインに赴任中に、2歳半と1歳直前の二人の子供を連れて訪れた時のお話です。
医療制度が違うイギリスで、急に高熱を出してしまった息子をいきなり大きな病院に連れて行った時の対応や入院までのいきさつは「夏のイギリス、子育て体験記③」にまとめてあります。
ぜひ、あわせて読んでくださるとうれしいです。

庭でご機嫌の息子と手伝いに来てくれた妹

外国で子供が病気にかかったら、どうしましょう⁉ 後編

採血で息子は目を開けて気絶?

入院の準備をして、再び病院に戻ってきた息子に待ち受けていたのは、恐怖の採決という試練でした。医者が二人がかりで右手、左手、両足とあちこちに注射針を刺しては失敗し、成功したかと思えば、血が足りなかったからもう一回と言い、その技術のお粗末さは日本では考えられませんでした(まぁ、当時は考えられなかったんですが、帰国してから何度か長男は具合が悪くなって点滴を受けないといけない状況になったことがあるんですが、そのたびに彼の血管の細さは日本の医療従事者をも困らせてはおりました)。

暴れる長男を私が必死ではがいじめにし、子供は泣き叫び続け、しまいには声が枯れてしまい、途中、目を開けたまま気を失ってしまったみたいになって散々でした。おまけに、採血するための試験管を床に置いたりしていて、潔癖症の主人には許せないことでした。
しかし、おかげでずーと出なかった尿が出てくれて検査に回すことができました。

診察の結果は、耳、胸、おなか、どこも異常なし、のどが少し赤いくらい。尿検査もすぐに結果が出てこれも問題なしということでした。

子供部屋のような小児科用の入院病棟

小児用の入院病棟は2階にありました。つくりは救急外来とほとんど同じ。個室が10室ぐらいあり、あとは大部屋にベッドが10床ぐらい。その大部屋に入ったところのコーナーにカウンターがあって、そこがナースステーションというかスタッフ待機所になっていました。
つまり、そこから大部屋のすべてのベッドが見渡せるようになっているのです。

大部屋は日本の学校の教室およそ2倍ぐらいの大きさで、両側の窓の面したところにベッドがかなり余裕を持って置かれてありました。ベッドのほかにプレイコーナーみたいなのがあって、絵本やゲーム、ビデオから三輪車まで置いてありました。朝早くから、子供たちが三輪車を乗りまわす音で起こされ、いったいここはどこだっけと思ったこともありました。

大部屋の窓は天井まである細長いものでしたが、その窓のひとつひとつにディズニーのキャラクターが大きく描かれてありました。壁紙も子供が好きそうな楽しい絵柄。各自のカルテをはさむバインダーもディズニーのものでした。
どれひとつとっても病院くさいというか、消毒薬くさくなくて、子供が安心し、くつろげる空間を演出してありました。

大人用のトイレにはシャワールームもついていて、付き添いの人への配慮も忘れていません。それから、キッチンがあり、食器類や鍋類が置いてありました。フルーツ、シリアル、パン、ビスケット、ジュースにコーヒー、それからベビーフードと粉ミルクがなどが常備されていて、朝食など軽食は各自自由にここで作って食べるようになっていました。

入院の際に言われた注意事項は、コーヒーなどの熱い飲み物は病室に持ち込まないようにということだけでした。あとは、常識にしたがって行動しろということなのでしょう。さすが、「大人の国」という印象を受けました。

無防備な患者を守る病室のセキュリティ

午前中に一度、移動売店のようなものがまわってきて、チョコバーやポテトチップスのようなスナック類や雑誌、新聞などを売っていました。病院が広いからこれは助かりました。ここで買ったポテトチップスを昼食代わりにしている付き添いのお母さんもいました。

長く入院している子供の付き添いなら、たまにはちょっと外で息抜きしたいと思うかもですが、私の場合は目の離せない乳児でしたからこの病室から出れませんでした。もっとも、いったん出てしまうと実はめんどうなので出たいとも思いませんでしたけどね。。
なぜなら、それはセキュリティがとてもしっかりしているからです。
病棟へ入る際は、暗証番号を押すか、インターホンを押してモニターで顔をチェックされ名前と用件を言わないとキーが開かないシステムになっているのです。これは、救急外来も同じでした。
売店が向こうからやってきてくれる、トイレ、シャワーやキッチンまでが全てひとまとまりにあるのは、出入りが必要最低限にするためでもあると思います。

私たちがイギリスへ行っているとき、大阪の池田小学校児童殺傷事件が起こりました。これはイギリスでも衝撃が走りました。主人が言うには、イギリスの学校のセキュリティはしっかりしていて、不審者が入らないように工夫されているのだそうです。この病院のしくみを見て、その話もうなずけました。

確かに日本の医療レベルは高いのでしょうが、こんなイギリスの地方の病院でも見習ってほしい点はいくつもありました。

children playing with toys
イメージ

突発疹で2泊3日の入院ライフ

入院1日目、大部屋のベッドに通されました。付添い用の簡易ベッドを息子のベッドの横に出してもらい、主人と一緒にそこに横になりました。ですが、熱が下がらずうなされる息子におっぱいをあげたり、あやしたりしながらのつらい一晩になりました。

次の朝の回診で、医者から便、血液ともに問題なしと言われました。
「原因がわからないので、抗生物質などの薬を処方できない。もう一晩泊って、回復傾向にあることを確認してから帰ってはどうか。ここにいれば、熱が高くなれば解熱剤をすぐに飲ませることができるから」と言うのです。
そして、個室が空いたからそっちに移るように言われました。大部屋のベッドはほぼ満員なのに、一番後に入院した私たちがなぜ個室に移れるのかしらと不思議でした。おそらく、息子はまだ赤ちゃんで授乳もしなければならないことを配慮してくれたのでしょう。
それにしても、東洋人はどんな扱いをされるかわらかないと言っていた主人の偏見はこれで打ち砕かれました。

しかし、日本で個室と言えば特別料金が上乗せされ、かなりの額を請求されます。いったい入院費はいくらになるのか、後で旅行保険で落ちるにしてもヒヤヒヤものです。

長男はだんだん元気も回復し、熱が下がっているときはベッドの柵を越えようとしたり、おもちゃをポイポイ柵の外に投げたりと、少しも目が離せない状態になってきました。

そして迎えた3日目の朝。熱を出してから4日目。熱は平熱にもどり、そのかわりに身体に発疹が出てきました。
「ほら、やっぱり突発疹(突発性発疹)だったんだー」
変な病気でなかったことがわかって一安心です。
ところが、イギリス人医師に突発疹が通じない!
『起きてから寝るまで子育て表現50』(アルク)という、子育てで使う英語表現が掲載されている本があるのですが、そこに突発性発疹の英名が書かれてあったのでそれを見せたのですが、「まぁ、そうかもしれないが」と受け流し、
「でも、やっぱり原因がわからないので、もう一度血液検査をしたいのだが」というのです。

冗談でしょう!?
あの悪夢のような光景が、目を開けたまま気絶しているかのような放心状態の息子の顔がフィードバックします。熱が下がったのだから採血せずに連れて帰りたい旨を伝えると、
「1週間様子を見ましょう。1週間の間に容態が悪くなったらすぐに連れてきてください。その時採血しましょう」というので、承諾しました

person getting his blood check
これはイメージです

さぁ、これでめでたく退院です。
恐怖の請求書は待てど暮らせど出てきません。まったくの無料だというのです。
イギリス国民はすべて医療費はタダ。だから、病院に会計のシステムがないようです。例外者の私たちが病院を利用しても、医療費を計算することができないのでしょう。もちろんイギリスでも特別の医療サービスが受けられる機関で診察してもらえばそれなりの金額が必要になります。

主人が大部屋のキッチンに置いてある募金箱にお礼の気持ちを込めて、心ばかりのお金を寄付させていただきました。

スタッフも他の患者のお母さんがたもみんな親切にしてくださったし、医療費は無料だったし、あの拷問のような採血さえなければ、終わりよければすべて良しという気分です。
帰国してから「突発疹ぐらいで2日も入院したのよ」と、笑い話のネタにされているこの体験。普通の旅行ではとても見ることができない病院の内側をしっかり観察することができて、いい経験だったと今ならいえます。

syringes on white background


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