―夏のイギリス、子育て体験記⑤―

こんにちは、ひらりんです。

2001年の夏に二人の子供(2歳半と1歳)を連れて主人の赴任先であるイングランド北東部、ニューカッスル・アポン・タインを訪れました。寒い地方なので、夏の温かい時期の3か月だけです。帰国してからまとめた文章が残っていたので、それをリライトしてブログに載せることにしました。第5弾です。

ぜひ夏のイギリス・子育て体験記① 夏のイギリス・子育て体験記② 夏のイギリス、子育て体験記③ 夏のイギリス、子育て体験記➃ もあわせて読んでくださるとうれしいです。

今回は育児グッズから日本とイギリスのお国がらの違いを見ていきたいと思います。
20年前の見聞ですから、今では日本でも珍しくないものもあるかもしれませんが……。

公園のブランコ  幼児でもひとりで乗れる

初めてのお買い物はベビーカー

イギリス・ニューカッスルの飛行場に着いて荷物を受け取ったとき、なんとベビーカーが壊れていました。長女N子は日本ではベビーカーを卒業していましたが、これから長男A男がたっぷり1年以上使う必需品なのに。

そこで、イギリスで最初のお買い物はベビーカーとなりました。

訪れたお店は「マザーケア」という、出産準備品から育児グッズ全般を取り扱うチェーン展開の専門店。ベビーカーも実にいろいろな種類がありました。

日本ではカタログで「ヨーロッパで話題」と紹介してあった、リアカーのように前輪が1つしかない最新型のものや双子用のも数種類ありました。日本では大きな店舗でも双子用は1種類くらいしか置いてない場合が多いのですが(当時)。


イギリス人って双子が生まれる率が高いのかしら。というより、後でわかったのですが、こちらの人はわりと大きくなるまで(たぶん3歳ぐらい)、ベビーカーを利用する人が多いようです。2席横並びのベビーカーに兄弟を乗せているケースをたびたび見かけました。

しかし、多くのベビーカーが置いてあっても、私たちが探しているものは見つかりません。特別なものを探しているわけではないのです。日本では普通に売られているもの。軽くて、ほろが付いていて、コンパクトにたためて、たたむと支えがなくても立ててられるというもの。このたたむと支えがなくても立ててられるというのがなかなか見つからなかったのです。

B型のベビーカーにほろが付いていないものも多かったのですが、これは思うに、押している親から子供がよく見えるようにという配慮と、日よけなら、アームに取り付けることができる角度を自由に変えられるパラソルが別売りであるから、それを買えということらしいので、納得できるんですが……。

しかし、たたんでも自立できるベビーカーがあまりないのはなぜなんでしょう。
どうも、構造が日本のものと根本的に違うのです。
日本のはたたむと前後がぺちゃんとくっついて4個の車輪で立つことができます。
が、イギリスのものは、たたむとまるでハサミを目一杯ひろげたときのように前輪が上に持ち上がってしまうのです。後輪二つだけでは立てておくことは難しいでしょう。

主人はかなりの潔癖症。地面に対してとてつもなく神経質になるタイプ。車輪が上にあがるということは、立てられないだけでなく、車輪についた土やら汚れやらが座席部分にふり落ちるということ、そこに子供のお尻が乗るなんて、不潔きわまりない! というのです。

しかし、不潔だ、不便だと言っていても始まりません。また日本に帰ってそれなりのものを買うことにして、とりあえず、安くて、軽い、ほろなしの、たたんでも立てられない、座席部分も背中のところも布1枚はってあるだけというイギリス製のベビーカーを買うことにしました。上の写真の端っこに写っている緑色のやつです。

ひそかに日本に帰ってから、そこら辺では見かけない舶来性の、ちょっとかっこいいベビーカーを押している自分の姿を想像していた私には、悲しい結果となりました。

ポテチ片手にベビーカーに乗っているいる子供たち

ベビーカーはお粗末でしたが、イギリスにおけるベビーカーの社会的地位はかなり上の方だと、暮らしていて感じました。
「子供は国の宝」というか、ベビーカーも車いす並みに優遇されているようでした。
スーパーの大きな駐車場でも、ベビーカー使用者の車は店舗入り口近くの場所が確保してありました。(最近日本でもスーパーの入り口近くは車いす専用のマークが付くようになってきました)
地下鉄の駅でエレベーターがないところは、必ずといっていいほどスロープがついていました。
デパートの中でも、4,5段の階段があれば、横にはスロープがありましたし。

これらの設備は車いすの人が多いという理由(一種の風土病で、足の悪い人が多いらしい)からかもしれませんが、車いすやベビーカーに対する配慮は日本に比べて進んでいる感じでした。

それゆえ、ベビーカー人口も日本に比べて多いような気がしました。前にも書いたように、かなり大きくなった子でもベビーカーに乗せてショッピングを楽しんでいるお母さんたちをよく見かけました。

日本では2歳を過ぎると、ほとんどベビーカーは卒業させているようですが、2,3歳の子供たちを野放しにしていたら、あっちでウロチョロ、こっちでウロチョロと、落ち着いて買い物なんかできません。
気が付いたら子供がいなかったという場合、日本では迷子ですまされるところ、こちらでは即、誘拐も視野に入れないといけない社会情勢も関係するのかもしれません。

ベビーカーライフを快適にするためのグッズも充実していて、アームに取り付ける絵本などもありました。でも、一番よく見かけたのが、プラスチック製のマグ、ストローが飛び出したり、突起状の吸い口がついているのを持っている子たちでしたね。


「ジュースでも飲んでおとなしくしててね」というところでしょうか。
ポテトチップスの小袋を持たせているのも珍しくありませんでした。こちらはジャガイモが主食だからなのか、幼児に塩辛いポテチを食べさせていても、親に罪悪感はないようです。

ベビーカーは卒業したはずのN子でしたが、ウロチョロされて誘拐されたら困るので、新しく買ったベビーカーはほとんどN子が乗ることになりました。
そして、日本では卒業していたはずのA男の抱っこひもが再び復活したのでした。体重10キロ(米袋といっしょだー‼)のA男を抱いてのショッピングというのは、決して快適というものではありませんでしたけれどね。

ハーネス、日本ではなぜ広まらないのか

公共の場で、よちよち歩きの子供をベビーカーから降ろして歩かせるとき、イギリスではハーネスという道具をよく使っているようでした。
ハーネスと聞いて私たちが想像するのは、そう、盲導犬が胸のところに着けて、飼い主のそばにピタッとついて歩かせるための引き綱のような道具。もちろん子供に着けるのは金具ではなく布製ですが。

腕を通し、胸のところでエックスに交差させたひもを背中で留めて、50センチほどのひもがついたものです。

嫌がるかなと思ったのですが、N子はこれを気に入ってくれて、素直につけてくれました。
スーパーマーケットなど、子供たちにとっては魅力でいっぱいで、親にとっては死角が多い場所ではとても便利です。ショッピングカートを押しているとベビーカーは使えませんしね。

商品を吟味しているあいだでも、ハーネスをしっかり握っていれば、子供がいなくなる心配はありません。車道への急な飛び出しを防ぐのにも有効です。

帰国してからもしばらく使っていたのですが、周りの反応はまちまちでした。
「これはいいわね」派と「犬みたいでかわいそう」派にわかれるのです。「これはいいわね」派には歩き始めの本当によちよちの子につけて、転びそうになったときにひもをクイっと持ち上げ、転倒防止に使用する場合もあります。

肯定派がいるにもかかわらず、日本で広まらないのはなぜでしょう。カタログに持っていたのを見たことがあるし、ハーネス型ではなく腕輪型(子供の腕に着けるゴム製のもの)だったら、育児グッズ専門店で売っているのに。

日本は安心、安全な国という神話が崩れてしまって久しいのに、危機管理に対する意識がイギリス人に比べてまだまだ低いのかもしれません。

road fashion person street

自転車に見るイギリスと日本の違い

日本でよく見かけてイギリスで見かけなかったのが、自転車の前や後ろに子供を乗せて走っているお母さんの姿。すごいのになると前と後ろに乗せ、さらに3人目を抱っこひもで抱っこし4人乗りしています。
子供ひとりなら、専用の自転車も開発されてずいぶん安全になっているらしいけど、それでもバランスを崩して倒れることはあるでしょう。


自転車があれば子連れでも行動範囲が広がるので、私も欲しかったのですが、主人の猛反対により断念しました。

イギリスではふたり乗りしている自転車を見かけませんでした。
そして、自転車に乗っている人は必ずヘルメットをかぶっていました。それも、ダサいのではなくて競技者が使っているような流線型のかっこいいやつ。
コマ付き自転車に乗っているようなちっちゃい子でも、ヘルメットは一人前でしたね。服装もピタッとしたレオタード用の生地でできたスポーツウエアで決めている人が多かったし。
そういう人は移動の道具というよりは、サイクリング自体を楽しむ感じで乗っていたようです。

こういうところにも、イギリス人と日本人では自分の身を守る意識に差があるような気がします。

育児用品はスーパーでなんでもそろってしまう

「イギリスは子供を育てるのにはいい国だ」という声をよく耳にしました。ロンドンのような都会でも公園が多く、リスやウサギを見かけることができるほど自然が残っていること、医療費が無料だということ。そして、育児用品が安いということが主な理由らしいのです。子供の衣服は消費税率が低かったり、教育費が非課税だったりするようです。

たいていのスーパーマーケットで育児用品が充実していて、買い求めやすかったのは実感です。
通常利用していたスーパーは大中小と3軒ありました。小といっても日本の中型店並みの大きさです。そのいちばん小さなスーパーでも、粉ミルク、離乳食品で陳列棚1列、向かいの1列に紙おむつ類。あいだのワゴンにおしり拭きやシャンプーなどのお風呂用品が置かれてありました。

大型店にいたっては、新生児用品やおしゃぶり、歯固めまでそろってしまう充実ぶり。へたに専門店の「マザーケア」に行くよりも、安くていいものが見つかることもありました。

驚いたのは、赤ちゃんの泣き声キャッチセンサーまで、スーパーに売っていたことです。
ベビーベッドの枕元に1台、もう1台をキッチンなど親のいるところい置いて、赤ちゃんが泣いたら親に泣き声が聞こえるという機械。
日本では育児用品カタログに載っていたのを見たことがあるくらい。私のまわりで使っている人は誰もいませんでした。やっぱりイギリスは家も広いし、子供は赤ちゃんでも子供部屋で寝かすのが当たり前、というお国がらの違いがわかるグッズです。

N子は私の妹の部屋で柵のあるベッドに寝かせていたのですが、昼寝などひとりで寝ていて起きたとき、ベッドから降りようとして落ちないようにこの機械を買いました。
隣近所で孫を連れて子供たちが実家に帰ってくる夏。この機会は音波をキャッチして、親機が反応するのですが、近所の赤ちゃんの泣き声まで拾って聞こえてくるのでびっくりした。
子供のいるうちでは当たり前のように使われているのがよくわかりました。


日本でも今はこういった商品が一般的になっているのでしょうか。
見つけました! おひとり暮らしの親御さんなどにも応用できる見守りカメラ、これなら、お子さんが大きくなって、お留守番を頼むのにも便利ですね。

SIM内蔵みまもりカメラ【みまもりCUBE】

以上が20年前にまとめた文章です。
日本の育児グッズは20年の歳月の中で日々進化をとげています。ママ、パパたちのため子供たちのためにより便利さを追求しているんだろうと思います。

きっと私の子供たちが子育てする頃には便利なものがあふれていて、孫の世話を押し付けられたときに面食らうんだろうなと、容易に想像できます。

そして、その進化の方向性が文化というかその国のお国柄がらによって違ってくるんだということが分かったイギリス子育て旅行でした。

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