こんにちは、ひらりんです。

舞台「死ねばいいのに」はミステリー作家京極夏彦氏の作品。

タイトルがタイトルだけに、夫を誘うのが憚れて、主演新木宏典さんファンの娘と二人で観に行ってきました。

マイナスイメージのタイトルに、お正月早々(といっても1月20日)こんな暗い舞台を観ていいのかしらと思ったのですが、決してマイナスなものではなく、それでも死を意識する年代の私にとっては改めていろいろと考えさせられる作品でした。

blue red and black abstract painting

人の心にどかどかと踏み込んでくる青年と6人の生きるのが下手な人達との会話劇

アサミという女性が殺されました。

そして、その女性と4回しか会ったことがないという青年がアサミと関わりのある6人の人間に話を聞きに行くというストーリー。

ネタバレですが、主人公の青年ケンヤが犯人です。

ネタバレといっても最初に公式のXで発表していたので、原作を読んでいない私でも知っていました。公式ホームページは http://stage-shinebaiinoni.jp/ です。

それでも話が展開していくにつれ、あれ、犯人はケンヤじゃなかったの? ケンヤじゃないんじゃない? ケンヤじゃないかもしれない........ケンヤが犯人じゃなければいいと思い始めた私がいました。

ケンヤがアサミを殺す理由がわからなかったからなのか、ケンヤという人間が魅力的だったからなのかはわかりませんが。

パンフレット

ケンヤが話す相手は、

1人目はアサミと不倫をしていた職場の上司。
2人目はアサミの隣人。同じ派遣会社ということで親しくなる。恋人をとられたと思っていた。
3人目はアサミを情婦としていたヤクザ。
4人目はアサミの母親。借金返済のためにヤクザに娘を売ったこともある。
5人目はアサミの事件の担当刑事。
6人目はケンヤを担当する国選弁護人。

ケンヤはこの6人とひとりひとり会話していきます。

「俺さ、バカだから、わかんないからきくんだけどさー」

と、軽薄そうな態度をとりつつ、相手の腹の中にづかづか押し入って来て、相手を怒らせてしまうのだが、ついついみんな本音を言ってしまう。

私だったら、なんで初対面の人にそんなことを答えなきゃいけないの? なんで自分の内面をさらけ出さなきゃいけないの? って思って絶対答えないだろうな。

見ず知らずのどこの誰ともわからない人に、自分の弱いところ出しちゃう?

でも、この6人は腹を立てながらもケンヤにしゃべっちゃうんです。

自分がいかに生きにくい世の中で生きているか、自分を取り巻く環境がいかに恵まれないか、自分がどんなに可哀そうか、ぐちぐちと言ってしまうんです。

そしてケンヤに言われてしまうんですよ。

「それじゃあ、死ねばいいのに」

って。

ケンヤは純粋無垢でうら表のない素直な青年で、どうしてアサミは死ぬことに抵抗がなかったのか、笑って死ぬことができたのか、その疑問を率直に知りたかっただけなのでしょう。

そして、誰か一人でもアサミの死を嘆き悲しむ人がいれば、アサミの最期を話してあげようと思ったのかもしれません。

「それじゃあ、死ねばいいのに」と言われた時に、「いえ、私は生きたいんです!」と言える人生を、いや、まずケンヤから「死ねばいいのに」と言われない人生を送らなければならないー

そんなマイナスではなくてプラスのメッセージを受け取るには、私的にはちょっと無理がありましたけど。

それでも、劇場を出た時、後味の悪さは全くなく、むしろ、いい舞台を観た爽快な気分で家路につくことができる作品でした。

劇場に入るなり迫ってくるかのような迫力を感じる舞台セット

奥の方の野菜がよく見えるように八百屋さんの陳列棚は奥を高くしています。

そんな奥の方を高くした舞台を八百屋舞台というそうです。

舞台「死ねばいいのに」のステージも八百屋舞台を取り入れていました。

平面の部分がなくて、ぎりぎりの手前から斜めになっていて、その角度も10度だそうな。

ふつうの八百屋舞台は8度なのだそうですが、たった2度でも全然違うと思います。

劇場に入って、この舞台が目に飛び込んできた時、思わず怖い! と驚いてしまうぐらい斜めに反り立っていました。

開演前は撮影OKでした

青い照明でライトアップされた舞台、そこにある舞台セットがまるで宙に浮いているように迫まって見えました。

娘は斜めの舞台を眺めながら、「あのイスとか、滑って落ちないのかしら」と心配しておりました。

私は、きっと滑らないように固定されているんだろうと考えていました。それか、滑り止めがついているか。

それぐらい急な斜面になっていたので、こんなところで普通にお芝居できるのだろうか、歩くのでさえ怖い舞台だなと不安に思いました。

役者さんたちはさすがにプロです。舞台が斜めになっていようが、平らなところに立っているかのように平然と歩き、イスに座り、取っ組み合いをして投げ飛ばされて。

つまり、舞台セットは固定されているわけではなくただ置いてあるだけでした。

役者さん達は、おそらく普段とは違う筋肉を使いながらの熱演だったのだと思います。

2番目のアサミの隣人の女性カオリを演じた役者さん(宮崎香蓮さん)がラジオで話されていたのですが、けいこ中はずっと平面でされてて、劇場に入ってから八百屋舞台でけいこされたとのこと。

しかもカオリは高いヒールの靴を履いていたので大変だったそうです。

舞台を横切る時も右足と左足の長さが違うので怖かったとか。

一歩間違えれば役者さんが怪我をするかもしれない、そんなリスクのある舞台をなぜ今回採用したのか?

それは奥までよく見えるようにするため、だと私は思います。

この舞台は1幕物で、途中で幕を下ろして舞台セットを変えたりしません。

ケンヤは喫茶店で1人目の男と会い、2人目の女性と話すために女性のマンションの部屋に入っていきます。

ケンヤは舞台のセットの中を縦横無尽に歩き回り6人の人間と次々に出会うのですが、それが全て同等に大事なので、舞台奥の方での出会いもよく見えるように斜めになっていたのだろうと思います。

青いライトの当たっていない暗い闇の中を黒いとぐろがどろどろと渦を巻いているのが見えました。

アサミはなぜ死を選んだのか、他の人たちはなぜ死を選ばないのか、その違いは何なのか、そんなケンヤの疑問を、それぞれの人間の混沌とした闇の中を彷徨い歩いてぶつけていく、そんな演出のために八百屋舞台は必要だったのだと思いました。

この年齢だからこそお正月に死について考えること

子供の頃に読んだ一休さんの物語で、お正月にシャレコウベを棒に刺してお正月に練り歩く大人になった一休さんの話が載っていたのを記憶しています。

昔はお正月になるとみな一律に1歳年を取ります。お誕生日ではなくて1月1日に。

ごちそうだ、お酒だとお正月のお祝いにどんちゃん騒ぎをしている人に一つ歳をとってそれだけ死に近づいたんだと戒めるための行動でした。

浮かれてないで、死をもっと意識しなさい、ということなのでしょう。

つまり、毎日をていねいに生きていきましょうということなんだと思います。

blue and white sky with stars

私は子供のころから『死』が怖くて、そのことを考えると背中からすーと血の気が引くような感覚になって、寝られなくなることもありました。

過去、未来と永遠に続く時間の中で自分に与えられた一瞬の時間、それがどんな意味があるのだろうか。

死んでしまって何もなくなって人からも忘れられて、そしたら、いったい自分は何のために生きたのか、生きているのか。

恐ろしくて目を背けるように、考えないようになりました。
そうしているうちに、目の前のことで忙しくて忘れていましたが、よく考えたら私も60歳を過ぎています。

どうあがいたってあと20年もすれば死んでしまう年齢です。

誰一人としてこのお約束から逃れることのできる人はいないのです。

それでも私は最後の最後まで抗う気持ちで生きていくんだと思います。

ところが、この舞台の主人公ケンヤはたぶん少しも生に対して執着心がないのだと思います。

「死ねばいいのに」なんて、簡単に発することができるんだから。

きっと、生と死の境のない混沌としたところで生きているのではないかしら。

夢や目標もなくただぶらぶらと生きている。生から死へのハードルが低すぎる。

だから、生きづらい世界でそれでも生きている人たちに簡単に「死ねばいいのに」と言えるんだと思います。

でも、他の登場人物は、いえいえたいていの人たちは生きにくい世の中でも死を選ばすに生きているんです。

ケンヤ役の新木宏典さんはアフタートークで、「自分はいつ死んでも後悔しないように毎日精いっぱい生きています」という意味のことをおっしゃられたそうですが、その潔さもたいていの人には持ち合わせてないものです。

でも、私ぐらいの歳になってくると死というものを今までよりもより身近に感じてしまうのも正直な話です。

残りの人生を後悔のないように生きなければなりませんね。

ケンヤと6人の登場人物。その人たちのセリフに共感できるものはなかったのですが、一つだけ、すっと心に響いた言葉がありました。

それは、4人目のアサミの母親が言った

「私だっていつまででも寝ていたいわよ」

という言葉。確かにそう聞こえました。

冬の朝、いつまでも暖かい布団の中にいたいなとうじうじしているとこの言葉を思い出します。

「それじゃあ、死ねばいいのに」ってケンヤに言われそうです。

「だって、死ねばいつまででも寝てられるよ」って。

いやいや、そういうことじゃないんです。

私にはやらないといけないことがあるので起きますよ。
ずーっと寝ていたいわけじゃないんです!


このブログでは観劇日記の他に糖尿病などの健康について(川崎にある総合健診センター・ヘルチェックで健康診断を受けてきました など) や薬草茶について(ちょっと変わりだね健康茶、玉ねぎの皮茶とシナモン茶を飲んでみましたなど) の記事をまとめています。

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